


サー・ロジャー・ノリントンとシュトゥットガルト放送交響楽団(SRSO)の一挙手一投足には、今や全世界が注目していると言っても過言ではない。現代のオーケストラが忘れ去りつつある“そこにあるべき的確な音楽的語法”を取り戻し、現代の奏者にとって当たり前のテクニックとなったヴィブラートをあえて排することによって得られた純粋な響き「ピュア・トーン」から紡ぎ出す明瞭なサウンドは、手垢にまみれたようにも思える名曲を、まるで初めて聴くかのごとく、みずみずしい存在へと蘇らせた。
ノリントンは1970年代後半から、自ら設立した古楽器のオーケストラ、ロンドン・クラシカ ル・プレーヤーズ(LCP)と共に、バロック音楽から後期ロマン派まで、時代ごとの楽器を使い、それぞれの演奏法を実践しつつ、幅広いレパートリーに取り組んだ。古楽運動の潮流が大きく盛り上がった時期とは言え、驚異的なスピードで時代を下ってゆく、貪欲とも言える演奏活動は、その取り組みに興味津々の聴衆にすら「一体、彼はどこへ向かってゆくのか」との思いを抱かせたものだった。
その「答え」を明らかにしたのが、現代の楽器を使うオーケストラであるSRSOとのコラボレートだ。98年に首席指揮者に就任して以来、実に多彩なレパートリーを、かつて誰も体験したことのないサウンドで再構築し、聴衆を沸かせ続けている。ノリントン自身は「ヴィブラートは第二次大戦前まで、オーケストラでは使わなかった」と自信たっぷりに説くが、もはや考証など二の次。音楽が本来もっている豊かな響きを丹念に掘り起こしてゆく「ピュア・トーン」こそ、古楽という枠をはるかに超えて、クラシック音楽の未来を切り拓いてゆく強力な武器のひとつかもしれない。
今回の来日公演のプログラムは、LCP時代からの蓄 積を結集したハイドンに、最新盤で新たなサウンドを構築したドヴォルザークの交響曲(横浜)、ずっと力を注ぐエルガー(東京)、それに、ノリントンが“イチオシ”のヴァイオリンの新星パク・ヘユンを迎えてのブラームスのコンチェルト。ノリントンとSRSOの“いま”がぎっしりと詰まっている。特に、ソリストのパクは2009年9月、第1位をなかなか出さないなど厳しい審査で知られるミュンヘン国際コンクールを制して、いま最も将来を嘱望される18歳。きらめく音色が、巨匠の音楽創りと共鳴し、新たな響きの宇宙へと誘ってくれるだろう。
音楽ジャーナリスト 寺西肇
| 2010年5月12日(水)19:00 | 横浜みなとみらいホール 大ホール |
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| 2010年5月13日(木)19:00 | サントリーホール 大ホール |
| S席:11,000円 | A席:9,000円 | B席:7,000円 | C席:5,000円 | D席:4,000円 | (全席指定・税込) |
| S席:12,000円 | A席:10,000円 | B席:8,000円 | C席:6,000円 | D席:4,000円 | (全席指定・税込) |
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古典音楽の演奏スタイルの権威として知られる。1998年〜現在、シュトゥットガルト放送交響楽団の首席指揮者に就任以来、大作曲家達の意向を忠実に表現すべく歴史的な演奏方法の研究及び開発を重ねている。オリジナル楽器の使用、演奏人数や配置、ボウイング、フレージング、テンポ、アーティキュレーションなど当時の演奏方法通りに行っているほか、ヴィブラートを用いない「ノン・ヴィブラート奏法」を用いて世界に衝撃を与えた。1750年から1900年のオリジナル楽器を用いた演奏法を研究するためにロンドン・クラシカル・プレイヤーズを設立。彼らによるハイドン、モーツァルトなどの録音は高い評価を受ける。 |
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同楽団は1946年の創設以来、二つの目的のもとクラシック音楽界を牽引してきた。一つは、偉大な古典やロマン派の楽曲の模範的な解釈を行うこと。もう一つは敬遠されがちな現代音楽を先頭に立って行っていくことである。歴代の首席指揮者には、セルジュ・チェリビダッケ、サー・ネヴィル・マリナー、ジャンルイジ・ジェルメッティ、ジョルジュ・プレートルなど名指揮者が名を連ねている。 |
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2009年9月に行われた第58回ミュンヘン国際音楽コンクールで、史上最年少の17歳で優勝。 |